『かあちゃん』

著者 重松清
発行所 株式会社講談社
定価 本体752円+税

概要

同乗者を自分と共に事故で無くしてしまった夫の罪を背負い、母は笑うことすら自分に禁じた。
その被害者である孫は、親友のいじめに加担してしまい、心に傷を負った。
いじめが起きたクラスの担任は、高名な教師であった母との比較に悩まされていた。
いじめの主犯者は、親の離婚と先輩からのいじめにより、荒れた暮らしを送っていた。

「母と子」を通して、家庭と学校の人間関係を綿密に記した物語です。

感想

テーマは母と子というよりは「贖罪」

夫の「罪」を背負った母も、いじめてしまった者たちも、被害者に対しての償い方をどうするか、という点が主題として語られています。著者もあとがきで、その点について語っています。

まず、二〇〇七年五月に『カシオペアの丘で』が刊行された。つづいて、二〇〇九年五月に刊行されたのが本作ー『かあちゃん』である。同年十二月には『十字架』が刊行され、僕自身の勝手で大げさな「史観」では、「ゆるすことについての三部作」が完結したのだった。

あとがきより引用

その償う方法ですが、一刀両断の解決策ではありません。背負い続けるという、非常に厳しいものです。以前に紹介した同著者の『十字架』という作品でも、加害者は生涯にわたり罪悪感という十字架を背負い続けるという論旨でした。
しようのない事ですが、これは苦しいですね。特に母は、事故以降に笑うことも幸せになることも拒否し、贖罪の為に自分を犠牲にするという人生を送ったのですから。しかも自分が犯した罪ではないのにも関わらす。
「母と子」もテーマの一つですが、どちらかいうと「ゆるし」が本題であるように思います。
『十字架』と同様、心が締め付けられる作品ですね。

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