『無理ゲー社会』

著者 橘玲
発行所 株式会社小学館
定価 本体840円+税

概要

難易度が理不尽なほど高く、攻略することが不可能なゲームの事を俗に「無理ゲー」といいます。

人には個性というものがあります。才能がある人、そうでない人。その中で、知能が高くなく、収入もそれに準じて低い。容姿も良くない。そんな人が、富と性愛を獲得するための競争を強いられる「人生」は無理ゲーそのものではないか。
著者は一部の人が無理ゲーと捉える社会を、「じぶんさがしという宗教」や知能格差から生まれる経済格差、容姿格差を挙げながら論じていきます。

感想

知能社会の残酷さ

本著でもそうですが、著者の書籍では、知能社会が問題の背景とされている事案がよく見られます。私たちが生きている現代は、主に知能の高さによって貧富の差が生まれます。頭が良い、知能が優れている人は収入がよく、地位の高い職業に就くことができる。それに比べて、運動能力や芸術能力は一般的にそこまで求められません(プロスポーツ選手や芸術家などの特殊な職業はこの限りではありませんが)。そして大多数の人々にとって重要な知能は。遺伝も大きく影響するというのです。この点については以前にも紹介した『言ってはいけない』『言ってはいけない2』に詳細が記されています。

知能は生まれつき、努力できるかどうかも生まれつき、容姿も生まれつきとなると、全て持ち合わせていない人にとっては生きにくい時代でしょう。しかも、私たちは「知能、学力は頑張れば伸びる」という”基本的な前提”を持っています。ということは、知能が低い低収入な人々は、努力をしなかった怠惰な人たちとなるので、その地位に甘んじていても仕方がないということになります。

一見自由で平等に思える現代ですが、俗にいう「持たざる者」にとっては自分の不遇がすべて自己責任とされるので、実はかなり残酷な世界ですね。武士などがいた時代では、境遇を身分のせいにしてプライドを保てたでしょう。建前上、現代は平等とされているため、逃げ道がないのです。
とはいうものの、生まれた時から身分によって生き方や人生が決められ、職業の選択権もなく、決まった相手と結ばれる。そんな時代の人生の方が良いかと言われると、答えに窮してしまいます。現代には解決困難な課題がありますが、それでも漸進しているのだと考え、図太く逞しく生きていこうと思います。

特に面白かった所

ベーシックインカムの抜け道

ベーシックインカムは、健康保険などの政府からの支援を一切取りやめる代わりに、一律決まった金額を個人に毎月交付するというものです。これが採用された場合、子供を目いっぱい生ませれば、セックスのみによって高所得者になれるというものです。これを防ごうとすれば、国籍のみで区別するのは不十分です(外国人でも帰化すれば受給者となれるので)。となると遺伝子で区別するという優生学につながってしまうというものです。
「地獄への道は善意で舗装されている」という格言通りですね。

また、白人差別の現状を映画『JOKER』が予言していたという論も面白かったですね。
『JOKER』は大好きな作品ですが、人種という観点では見ていなかったので、そこが新鮮でした。


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