『教師という接客業』

著者 齋藤浩
発行所 株式会社草思社
定価 本体1500円+税

概要

学校をサービス業との一つとして捉えている昨今の顧客(保護者)。彼らの過大で想定外である要求により、学校の教育環境や指導方法が著しく変化している、という論旨です。
公立小学校教師である著者(2020年現在)が、サービス業化している学校の現状に異議を唱え、学校、および教師の本来あるべき姿を述べます。

感想

教師とはサービス業なのか?

10年以上前には「モンスターペアレント」という言葉が生まれていたように思います。現在でも保護者の声が大きいという状態は変わっていないようですね。
「宿題の量が多いから減らしてほしい」
「子供が朝起きないから、先生が迎えに来てほしい」
「音楽界のピアノ伴奏者の選考に納得ができない。立ち合いをさせて欲しい」
他にも様々な、教師の指導や学校の対応に口を挟んでくるクレームが多いようですね。
自分の子供が一番かわいい、辛い事や挫折を味わわせたくない。そんな思いが根底にありそうです。

著者は、そのように甘やかされた子供が社会に出たら、自力では何もできなくなってしまう事が目に見えている、と述べています。
まさしくその通りですね。社会生活を営める人材を育てるという学校の使命を考えると、顧客のニーズを満たすことが目的であるサービス業の使命とは相入れない部分が多いでしょう。本書で引用されていますが、「奇跡の学校作り」として名を馳せた荒瀬克己の言葉が印象的です。

私たちは普通のサービス業ではなく、ちょった変わったサービス業に就いています。普通のサービス業の場合は相手の望むものすべてを提供するわけですが、私たちは望んでも提供しない場合があります。反対に、彼らが望まなくても提供する場合があるのです。彼らが将来困らないかどうかというのが、提供するか否かの基準です。顧客は数十年後の彼ら。つまり、未来の彼らからの要望にもとづいてやっているというわけです。

本書より引用

真に子供のためを思うのならば、学校教育は他のサービス業とは一線を画すものであるべきなのでしょうね。

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