『「自己中」の正体』

著者 齋藤孝  

発行所 辰巳出版株式会社

概要

相手を慮ることをせず、自分の事しか考えない人の事を俗に「自己中」と呼びます。「自己中心主義」の略です。
一般的に考えると、自己中の人は迷惑な存在だと言えます。自分の思うままに行動し、周りを振り回すからです。しかし、その自己中の心にあるエゴこそが、人間のエネルギー、魅力となるのではないかと著者は主張します。

感想

歴史上の出来事を用いて、エゴのもたらす弊害が書かれています。非常にわかりやすいです。それでいて、文学や芸術などにおいては、エゴが強烈な個性を持つ作家を生み出すとも書かれています。
折衷案と言いますか、どうやってエゴのバランスを取るか、というのが鍵ですね。

元プロ野球選手及び監督の野村克也氏の言葉で、「欲から入って欲から離れる」というものがあります。物事を始めたり、上達するためには、金銭や名誉といった欲がモチベーションになります。しかし、その気持ちが入りすぎると力みが生まれ、事を仕損じてしまう。だから、もう一歩先へ行くためには、お客様やチームの為に頑張るという気持ちを持つ。そうすると自然と力みが消え、事がうまく運ぶというのです。あくまで野村氏自身の体験から得た戒めですが、これは金言だと思います。

「太陽の塔」の製作者である岡本太郎氏も、「ぶつかり合って初めて調和が生まれる」と言ってますね。人に迷惑をかけまいと自分のエゴを殺す姿勢は一見美しいですが、同時に活力をも殺しているのだと気づきました。自分事として捉え、自らの主張は臆せずに出していこうと決意しました。

特に面白かった所

平成の時代を、窮屈な「マナー」が良くなった時代と述べた箇所です。啓蒙活動やSNSの普及により、昭和に比べて公共マナーは確実に良くなっているでしょう。ハラスメントも問題視され、以前よりも摘発されるようになりました。昭和やそれ以前と比べると、確実に住みやすい社会になっている、とのことです。
自分もその通りだと思います。特に組織や権力に対して、個人がtwitter等で意見を言える時代になったのが大きいと思います。巨大な組織のエゴを許さない。個人でエゴに立ち向かえるというのは、大きな進歩ではないでしょうか。「一億総監視社会」となり、どことなく窮屈な感じもしますが、



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