『「優柔決断」のすすめ』

著者 古田敦也  

発行所 PHP研究所

概要

インターネットの普及により、知りたい情報に簡単にアクセスできるようになりました。それはアスリートにとっても革新的だったようで、コーチからではなくネットから練習方法等を学ぶことができ、若くから技術力の高い選手が多くみられるようになったそうです。
しかし、そこには弊害もあります。情報過多で頭でっかちになり、自分が気に入った情報しか受け付けない。経験して、失敗して、そこから学ぶという事をしなくなる、というのです。
そんな若手選手を見てきた元ヤクルトスワローズの古田敦也氏が本書で述べるのは「優柔決断」。

柔軟に意見や情報を取り入れる。十分準備した上で迷ったら、「やってみないとわからない」と開き直って決断する。

そんな方法で球界屈指の名選手となった古田氏。彼の成功の基となった考えが経験と共に綴られた一冊です。

感想

古田選手の成功の秘訣は、物事に柔軟に取り組む姿勢であったことが分かりました。投手によって打撃フォームを少し変えてみたり、バットを数種類準備してみたり。考えて、実際に行動に移す。成功しても失敗しても、その経験をフィードバックして次回に活かす。
この姿勢は口で言うのは簡単ですが、実践するのは意外と難しいのです。失敗するのが怖くて躊躇する。前例がないからと諦める。周りの反応や叱責を気にして、変化させずに無難に済ます。自分の調べた情報と言ってる事が違うからやらない。
変化がない、もしくは自分の信じた情報しか取り入れない。そんな環境は居心地が良いです。しかし、得られるものが少なくなり、劇的な上達も見込めない。
多少居心地が悪くても、はなから切り捨てずに、試しにやってみる。誰の意見でも、自分で咀嚼してみる。その結果が成功でも失敗でも、そこから生まれるものはある。


古田氏の師匠だった野村克也氏の著書では、次の言葉がよく出てきます・

「失敗と書いて成長と読む」

名選手、名監督と言われる野村氏でも、数々の失敗から学んできたのか。むしろ、失敗を生かしてきたからこそ、あれほどの成績を残せたのか。古田氏と野村氏の考えにこのような共通点を感じて、改めて経験の大切さを肝に銘じました。これは自分自身への戒めであり、課題でもあります。

ちなみに、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉もあります。
古田氏の意見とは異なりますが、失敗したときの損害の程度による気がします。
失敗したところで少額失うだけであったり、多少の手間がかかるくらいなら、失敗から得られる経験の方が多いわけです。しかし、初期投資に莫大な金額がかかる事業など、コケたら再起不能になるくらいの事なら、経験者の教えや指示を仰いで、場合によっては撤退する方が良い。そんな風に自分は捉えています。

特に面白かった所

長所を伸ばすより、弱点を潰す方が良い、その方が長所が活きという意見です。
ビジネスなどでは、得意なことを伸ばして、苦手なことは他人に任せる方が良いという意見があります。古田氏の意見は、野球が相手と対戦するスポーツだからでしょう。
ストレートに強く、変化球に弱い打者が真っ先にすべきことは、変化球を最低限打てるようにすることです。ストレートだけで勝負する理由が相手にはないからですね。対してビジネスの場合は、根底が「協力」にあるので、苦手な点は同僚や提携先で補い合えばいい。

野村氏も著書で、欠点を矯正した方が使われやすくなる、といった事を述べています。勝負の世界では、短所が命取りになるという事でしょう。

オススメする方は

  • 古田敦也の成功の秘訣を知りたい方
  • 決断力とそれに至るまでの思考を知りたい方


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