著者 柏耕一
発行所 株式会社三五館シンシャ
概要
「最底辺の職業」と本人たちが自重する警備員。特に猛暑、極寒の中でも立ち続け、時に作業員やドライバーから悪罵される交通誘導員。それでいて日勤の給料は一日9000円前後とされています。
そんないいイメージがない交通誘導員の実情を、二年半ほど勤めてきた73歳(2019年時点)の著者が実体験をもとに綴っています。
感想
誰でもできる仕事というイメージと裏腹に、神経をすり減らしていく仕事だというのが読了後の率直な感想です。自分の誘導ミスで事故が起きたらと考えるとゾッとしますし、人付き合いも難しそうですね。
実は自分も大学時代に2か月の短期間、交通誘導員のアルバイトをしたことがあります。職場の方々が親切な方が多く、丁寧に教えていただいたので何とかなりました。ただ毎日のように現場とパートナーが変わるので、その点が独特でした。
著者は、主に人間関係で苦労したようですね。同僚にきつく当たられて、ドライバーに文句を言われて。こういった体験談を読むと、彼らが作業しやすくなるような、節度を持った社会人でいたいなと思う次第です。
特に面白かった所
仕事ができない警備員の特徴ですね。大まかに4つの特徴に分かれるそうです。
- 注意力散漫
- 無責任な人
- 何も考えない人
- 空気を読めない人
警備員でも空気を読めないといけないというのは意外でしたね。気を遣えないと、雇用側の現場から嫌がられることもあるのだとか。
オススメする方は
- 職業体験記が好きな方
ちなみにこの書籍はシリーズ化されているうちの1つです。自分は他に、『メーター検針員テゲテゲ日記』を読みました。メーターを読むのが難しい上に、ノルマ数が膨大なのが大変だという内容でした。
『タクシードライバーぐるぐる日記』
著者 内田正治 発行所 株式会社三五館シンシャ
定価 本体1300円+税
概要
50歳から65歳までの15年間、タクシードライバーを務めた著者の体験記です。売り上げの60%が収入になり、最高年収556万円、最低年収184万円。タクシー運転手の実情を時に悲しく、時にユーモラスに書いた一冊です。
感想
まず勤務時間の長さにびっくりです。朝7時から深夜の1時まで。帰宅した日は休みになり、月の勤務日数を相談してもらえるようですが、それにしてもエグい。この長時間勤務で、よく事故を起こさないものだと思います。
ちなみに著者の勤務態度は真面目で紳士的です。サービス業として懇切丁寧に接客されています。プライベートでバスを使い、不慣れな道を覚えようとする努力もされています。
自営の卸業が倒産し、食っていくためのやむなしの仕事でも、腐らずに精一杯の努力をされていることに感動しました。絶望して腐ってもおかしくなさそうですけどね。
特に面白かった所
勝手な思い込みで仕事を進めてはいけない、という箇所です。ゲン担ぎなどで気に入ったルートを持つお客様もおられるので、運行ルートは必ず確認するとのことでした。これは失敗から学ばれたとのことです。タクシー業務は、単純に速く目的地に着けばいいのだろうと思っていたので、これは目か鱗が落ちました。サービス業ってこういう所が難しいですよね。相手の気持ちを予想し、汲み取って、それに適した仕事をしなくてならない。臨機応変に対応することを常に求められる。
それが求められる時代でもありますね。単純に言われたことをやっているだけでは、満足されにくくなってきている。余談ですが、時代と共に、製造業からサービス業への比重が大きくなりました。その結果、製造業で職人気質の仕事をしていた人が、サービス業の柔軟性を問われる仕事に適応できなくなっているのだと別の本で読みました。
『非正規介護職員ヨボヨボ日記』
著者 真山剛 発行所 株式会社三五館シンシャ
定価 本体1300円+税
概要
56歳から老人介護の世界に飛び込んだ著者。離職率も高く、「最後の手段」という人もいる介護職の体験談を切々と、時にユーモアを交えて記した一冊です。
感想
介護は国が問題にするくらい給料が低いのに、体力的にも精神的にも激務という仕事というイメージです。本書では、スポットが当てられているのは精神的なストレスの方でした。
理不尽な罵倒を受け、お局様から叱責され・・・。しかし著者はその長い人生経験からか、それとも人柄からなのか、上手く流す事に長けているようでした。人と関わる仕事では、レジリエンスが一番大事なのかもしれませんね。
あと著者もあとがきで語っているのですが、本書では「弄便」は出てきません。文字通り、利用者が便を弄る行為の事を指します。著者は弄便に遭ったことはないようですが、介護職のキツイ業務の一つとしてこれがイメージされますね。機会があれば、その体験が書いてある書籍を読んでみようと思います。
特に面白かった所
利用者がいう事を聞いてくれない場合はどうするのか、という箇所です。入浴を嫌がる、薬を飲んでくれない、そういったときは「時間を置く」のだそうです。自分の主張を忘れてくれるのを待つしかないそうです。著者はこの方法をよく使うということですので、かなり通用するテクニック?なのですね。ブラックジョークみたいな話です。
著者は、介護という仕事をそれなりに楽しんでいるというのも印象的でした。最後に、そんな著者のあとがきから抜粋させて頂きます。
毎日深刻に真正面から彼らの「老い」や「認知症」と向き合っていては、それこそこちらのメンタルが持たない。面白がるくらいでないと。とてもこの仕事は続けられない、それは正直な感想である。
本書より引用
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