著者 内村鑑三
訳者 岬龍一郎
発行所 PHPエディターズ・グループ
概要
日本が誇る「日本的な」偉人5名を、著者である内村鑑三が紹介しています。その5人は以下の通りです。
- 西郷隆盛
- 上杉鷹山
- 二宮尊徳
- 中江藤樹
- 日蓮上人
ちなみに著者である内村鑑三は、武士道精神を根底に持ちながら、熱心なキリスト教信者でもありました。
とくに内村は武士道における気概・勇気・正直・清廉・節操・忍耐を重んじた人でしたが、これらの道徳律は全てプロテスタントも所有しているもので、だからこそ内村は「武士道に接ぎ木されたキリスト教」と言ったのです。
本書の解説より引用
ちなみに原著は外国人向けに書かれたもので、英語で書かれています。
感想
本書で紹介されている5人に共通しているのは、利益を求めず、義を貫いたということです。不義や腐敗を嫌い、公のために自らの使命を全うすることに努めました。それぞれの役割は違えど、「日本のサムライ精神」をもった偉人です。
ただ外国人への紹介という目的のためか、個々人のエピソードや解説は少しあっさりしています。特に上杉鷹山と中江藤樹はもう少し具体的な話が聞きたい。
伝記の入門書のような位置づけになるかもしれません。特に上杉鷹山については別に一冊読んでみたいと思います。
特に面白かった所
西郷隆盛の章が一番好きでした。朝鮮との外交、いわゆる「征韓論」で政府と対立し、官職を辞することになります。この征韓論ですが、西郷が大切にしていたのは「道義」でした。武力を盾に一方的に侵略することを悪とし、まずは礼を持って外交を行う。それでも非礼を受け続け、果てには肉体的な危害を加えられるようであれば、戦争もやむなしというものでした。
まずは義を持って接するという所で、筋を通そうとしている所が、西郷の人となりを表していますね。権謀術数や武力で支配する「覇道政治」ではなく、仁義を主軸に置いた「王道政治」を目指していたのではないでしょうか?
最後に、私が心を打たれた西郷の言葉を以下に引用します。
「文明とは正義があまねく行われることである。邸宅の荘厳さ、衣服の美麗さ、外観の壮麗さを言うのではない」
「正道を歩み、正義のためなら国家と共に倒れるほどの精神がなければ、外国との正しい交際は保たれない。その強大さを恐れ、平和を願って、筋を曲げて恭順するときは、外国の軽侮を招くことになる。その結果、友好的な関係も破られ、最後には外国に仕えるようなる」
「国家の名誉が損なわれるならば、たとえ国家の存在が危うくなろうとも、政府は意義と大義の道に従うのが明らかな本筋である。戦いの一字を恐れ、安易に平和を求めるに汲々するのは、商法支配所と呼ばれるべきであり、もはやこれを政府とは言いがたい」
本書より引用
オススメする方は
- 偉人について、さわりだけでも知りたい方
- 日本の偉人の精神性を学び、血肉としたい方
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