著者 齋藤孝
発行所 株式会社海竜社
定価 本体1000円+税
概要
勉強が必要なのは学生だけではない。勉強の旬は35歳からだ!
そう冒頭で意気込む本著では、自ら進んで学ぶ力、「勉強力」を高める方法、必要性、そして意義を丁寧に説いています。項目は次の通りです。
- 教養を身に付ける勉強力
- 教養が人生の幅を広げ、人生を豊かにする
- 勉強への踏み出し方
- 芋づる式勉強法
- 勉強は娯楽
感想
勉強するにもコツがいる、という事がわかる一冊です。同時に、勉強する意義をしっかり理解できる点でも素晴らしいですね。本著は35歳からの勉強がもう一つのテーマです。職場や家庭内での自分の立ち位置が定着してきた辺りで、さらに人生を良くするためにどう勉強するべきか、というものです。
普段の会話から、勉強力があるかが分かる
本著では「文脈力」、「発問力」から勉強及び教養の必要性を説いています。
「文脈力」とは、コミュニケーションを俯瞰して、話の方向性を理解して、自分も話を繋げていく能力です。
「発問力」は、常に問いを考えながら物事に当たり、深い読みを養うための力です。
これらがないと、仕事どころか日常でも苦労するのが目に見えます。話があっちこっちに飛んだり、質問したことと違うことを答えたり、自分にしか分からない事を話したりする。文字通りの浅い理解に留まり、物事を深く切り込んで考えない。
こうならないように自分事として捉えて、常に気を付けていますね。相手にちゃんと伝わっているか。必要な答えを過不足なく返せているか。他に考慮すべき問題点は見当たらないか。
この思考は経験でも養われますが、勉強し教養を積み重ねていくことでも培う事ができるとのことです。これは推測ですが、本などの体系的にまとめられた物に目を通すことで、論理的な思考が身につくからではないかと。仮にコミュニケーションが上手くいかなくても、反省して勉強していくという姿勢を習慣化することが、仕事もプライベートも楽しむために必要です。
まずは新書や評論、雑誌の丸ごと特集号から読んでみる
学術書は内容が固く難解であったり、古典は現代語と感覚が違って理解できなかったりと、実際に勉強しても挫折してしまうかもしれません。そういうときは、平易でわかりやすく書かれた新書や、文学などを読む際の道標となる評論が良いとのことです。雑誌の特集も、一般に向けて分かりやすく書かれています。
よっぽど食指の動かない分野であれば別ですが、さわりに到達する前に退場してしまうのは何とももったいない話です。
特に面白かった所
「ユーモア」感覚を身に付けよう、という箇所です。古典を引用したり、皮肉やウィットに富んだジョークを交えた会話をしてみる。普段の会話に笑いを混ぜることで、空気が和み、日常が楽しくなります。当然話し相手が知っているという事が条件になりますが、効果は抜群です。
そして著者は、教養を基にしたユーモアが最近通じにくくなっていると感じているそうです。知性と教養を必要とするので、人によっては全く笑えないでしょう。しかし、そこでユーモアを理解できなかったとしても、不愉快に感じてはもったいない。むしろ出典を知って学ぶことが、会話を楽しむための近道です。
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