『テスカトリポカ』

著者 佐藤究
発行所 株式会社KADOKAWA
定価 本体2100円+税

概要

メキシコの麻薬密売人であるバルミロ。抗争相手からの襲撃に遭い、兄弟と妻子を失う。復讐と再起を誓い国外に身を潜めている中で、日本人の末永に出会う。心臓血管手術を得意とする元外科医の末永とともに、新しい裏のビジネスを立ち上げる。

第165回度直木賞受賞作品です。

感想

アウトサイダー達を描いたバイオレンス・サスペンス

描写が暴力的なシーンが多くあり、非日常感が楽しめる一冊です。主人公がメキシコ人ということで、ルビにスペイン語やナワトル語が振られている所が多く見られます。加えて古代アステカの呪術的な信仰も詳しく書かれており、知的好奇心もくすぐられます。
タイトルの『テスカトリポカ』とは、ナワトル語で『煙を吐く鏡』という意味です。

メキシコの麻薬カルテルを発端とし、行き着いた先は日本。闇医師と組み、さらに構成員を増やして家族=ファミリアを作り上げていく。マフィアやギャングが大きくなっていく過程を見られるのも新鮮で興味深かったです。

ちなみにこの作品を知ったきっかけは、ヤングマガジンで現在も連載されている『税金で買った本』という漫画です。図書館でアルバイトする主人公のヤンキー、石平少年が読み耽った本として紹介されていました。こちらの作品も面白いです。セクシーとバイオレンス満載のヤングマガジン掲載作品の中で、図書館を舞台にした珍しいお仕事漫画です。

特に面白かった所

アステカ文明の信仰と呪術

とっつきにくいけれど面白いですね。生贄の心臓を取り出し、神に捧げる。この儀式が、末永の提案したビジネスとシンクロしているのがまた興味深い。

また、構成員につけるコードネームのセンスも面白いです。
調理人=エル・コシネーロ
蜘蛛=ラバ・ラバ
スクラップ=(ラ)チャターラ
などなど。アスリートの二つ名などが好きで調べたりするのですが、付け方の由来やセンスに違いがあって、見ていて楽しいですね。

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